電波伝搬を理解すれば無線通信技術がわかる：ディジタル·モバイル通信の電波伝搬へようこそ

摘要

電波伝搬というと，無線通信の世界を知り始めた人たちにとっては，何か古ぼけた学問分野というような印象を与えるのではないでしょうか．教科書類でも，アンテナと電波伝搬をセットにした何十年も前に書かれた本が今でも書店で売られています．狭い意味での電波伝搬，本特集でも第1章から第3章位までの電波伝搬の知識は，たしかに何十年も前のアナログ時代から明らかにされていた内容です．しかし，時代がディジタルで高速の移動通信が当たり前の世界になって，電波伝搬の知識と技術もそれなりに進歩してきています．変調方式や通信プロトコルなどの送受信機ハードウェアに直結する部分の技術開発ばかりが脚光を浴びていますが，その裏には，電波伝搬の測定や理論に裏付けされた知見が大いに役立っています．本特集では，電界強度の変化のしくみを追及していた古い伝搬伝搬もさることながら，ディジタル高速通信時代に欠かせない，電波伝搬の現象がどのようにしてビット誤りを発生させるのか，また，そのメカニズムを解明することで，ビット誤りによる伝送品質劣化をいかにして克服しているのかがわかるような解説を試みたいと考えます．そして，華やかな技術開発の陰に隠れがちな，電波伝搬の最新の知見がCDMAやOFDMやMIMOといった技術にどのようにつながっているかを紹介します．