(S242)拡散律速型相変態計算による鋼中炭素分配挙動解析

摘要

近年, 鉄鋼材料の高強度化と高延性化の両立のため，DP 鋼やTRIP 鋼などハイテン材の開発が盛hに行われている。特に冷延ハイテンは，冷延後の二相域焼鈍におけるフェライトとマルテンサイトなど第２相の相分率や各相の元素分配を知ることが重要である。中でも炭素は機械的特性を支配する極めて重要な元素であるが，測定時の表面汚染（コンタミ）により微小領域の炭素の定量分析には問題がある。著者らは炭素定量分析において大きな問題となるコンタミの影響低減に取り組み，炭素分析の空間分解能が1μm 以下，定量精度が0.01%以下の性能を有する電界放出(FE)電子銃搭載Electron Probe MicroAnalyzer (EPMA)を開発した1)。一方，拡散律速変態解析ソフトDictra は相変態挙動を解析するのに有効な手法であるが2)，前述の問題により，これまでに炭素分配挙動の計算結果と実測値との比較を行った例はない。そこで，本研究では高精度の炭素分析が行えるFE-EPMA の測定結果とDictra の計算結果を比較することによってDictra の炭素の計算値を評価した。