ファスナー用銅亜鉛合金ワイヤーのせh断変形メカニズム

摘要

ズボンなどの衣料品をはじめ，鞄や靴にも使用されている金属製ファスナーの嚙み合い部となる小型部材（エレメント）（Fig.1)は，銅亜鉛合金の異形線をせh断し，凹凸の成形（鍛造）を行い，そして布地へ取り付け（曲げ）られる（Fig. 2).この工程は1台のファスナー自動製造機によって，高速かつ連続的に繰り返される.新規に小型部材を設計する場合，それぞれの加工工程において設計通りの形状への成形を行なうことが難しく，目的の形状に合わせこむ為に試行錯誤を繰り返している.現在，開発のスピードアップ化が課題となっており，課題解決には各工程において設計した部材形状と加工工具および加工条件のマッチングを迅速に行なうことが必要となる.そこでまずエレメント製造の最初の工程である異形線のせh断加工に着目した.これまで，線材のせh断加工に関する研究は多くなされており，例えば炭素鋼の丸線材などを用いた実験において，切り口面特性に及ぼす材料特性の影響として，軟質材の場合はパンチとダイの喰い込みによって生じるゆがみに因って，破断面部にかさぶたが発生することが知られている.更に，クラック発生の喰い違いによる二次せh断面の発生を抑制するため，溝付きのパンチを用いたせh断加工の報告事例がある.また，角材の高速せh断における切り口面の傾斜角度に及ぼす影響因子として，どのクリアランス条件においても，ある切断速度以上をもって加工することで切り口面の傾きが0 deg.になることが明らかとなっている.一方で純銅などの軟質材はクリアランスの影響を受け，切り口面に傾きが発生する場合があることも報告されている.その他にも，線材の精密せh断として線材の軸方向の圧縮力が切り口面特性に影響を及ぼすことが知られており，せh断加工時の欠陥と発生要因についても言及されている.