特集：材料技術トレンドを読む工業材料キーワード50－フォトクロミック材料

摘要

フォトクロミック材料とは，特定の波長の光を受けることにより色を変え，自然に，あるいは別の波長の光により元の色（多くの場合無色）に戻る物質を言う．このような光誘起可逆着色現象はフォトクロミズムと呼ばれ，この現象を示す物質は，自然界にも，また人工系にも数多く存在する．生物が光を感知する器官には必ず存在しており，動物の光受容器ロドプシンに含まれるレチケール分子，植物のフィトクロームに含まれるテトラピロール分子は，このフォトクロミズムを示す．これらの分子は，光を受けると化学結合が組み替わり，その結果，生理反応に影響を及ぼし，光が来たことを知らせる役割を担っている．人工系では，20世紀初頭の染料合成の副産物として数多くのフォトクロミズムを示す物質が偶然に発見ぎれ，また合成されてきた．