〔新しい治療法とその試み〕移植腎の遺伝子治療

摘要

腎臓疾患に対する遺伝子治療は，腎癌に対して行われた免疫賦活を目的とする遺伝子治療以外は臨床応用されていない。この原因は，腎臓への遺伝子導入が極めて困難であり，また特定の細胞への遺伝子導入がほぼ不可能なためである。この結果，腎臓をターゲットとした腎疾患の遺伝子治療に関する研究は壁にあたっている。 その例外ともいえるのが移植腎への遺伝子治療である。 ドナーより取り出した腎臓には比較的確実に遺伝子を導入でき，また，過剰な遺伝子導入ベクタを移植前に洗い流すことは容易である。ヒト腎臓への遺伝子導入は移植腎の拒絶反応を防ぎ，長期生着が可能となる治療法としての応用が期待されている。