協同創造（co-production)としての当事者研究の可能性

摘要

当事者研究は，統合失調症をもった人たちから はじまった「自分の研究者になる」という経験で あり，自助の取組みである.研究テーマは，対人 関係や金銭管理などの日常の生活体験のなかから 生まれ，そのなかにはいわゆる幻覚や妄想体,験と いう固有の経験も含み，日常の"困りごと"から はじまることが多い.そこで大切なのは，どのよ うなときでも「研究しょう」という発想と態度を 手放さないことである.その当事者研究の一番の醍醒味は，それまでの治療や援助の対象者であった立場から，"自分を 助ける主体"として自らをとらえ，病気や障害の 体験も含めて，それを経験として研究的に語り， 研究の結果を仲間と共有し，意義ある成果は社会に発信するという広がりにある.