生前登録システムに基づく精神疾患ブレインバンクの取組み

摘要

統合失調症をはじめとする精神疾患を患う当事 者は，疾患そのものによる苦痛はもとより，さま ざまな場面で遭遇するスティグマ，薬剤の副作用 の三重苦を被ることで，著しいウェルビーイング の低下を余儀なくされている.その苦しみは当事 者だけでなく家族や周囲の人間をも巻き込むこと や，当事者の社会機能の低下による経済損失など 社会的影響も甚大である.近年，統合失調症当事 者を取り巻く治療環境には大きな改善がみられ， 当事者と家族は，治療者とともにめざすゴールを "リカバリー"と設定することが可能になったもの の，上記の課題の根本的解決は得られていない. これらを根本的に解決するには，病因?病態を解 明し，それに基づく治療法を確立すること，それ らを正しく理解し受け入れる社会的土壌が醸成されることが不可欠である.