その他の治療薬による薬物性腎障害：高脂血症薬，下剤·浣腸 安全に使用するための日常診療における注意

摘要

HMG－CoA還元酵素阻害薬（スタテン）は高コレステロール血症治療薬として疫学的にも有用性が証明され，忍容性に優れた薬として広く使用されてきた．しかし，副作用である横紋筋融解症およびそれに伴う腎障害への懸念がもたれている．スタテンに伴う筋障害は臨床的にミオパシー，筋痛，筋炎，横紋筋融解症と分類される．横紋筋融解症の頻度は単割使用の際にはスタチン間で差はない，多くのスタテンは肝のチトクロームP450の代謝を受けており，競合薬を投与すればスタチンの血中濃度を上昇させ，副作用の発現も高くなるので，十分認識しておく必要がある．この点からすれば，チトクロームP450で代謝を受けないプラバスタチンが安全といえる．注意すべき併用薬剤は多数あるが，フィブラート系,Ca拮抗薬，抗真菌剤,マクロライド系抗生剤,シクロスポリン，ワルファリンなどがある．浣腸は臨床上広く用いられているが，まれではあるが直腸潰瘍などの病変があると直接血中にグリセリンが移入して溶血から急性腎不全を惹起することがあるので，注意を要する．