医師の医療報道への不満と医学ジャーナリズムの不在 大衆メディアを非難する前に

摘要

媒体が一般大衆紙であろうが，医師向けの学術出版物であろうが，ジャーナリズムという点においては変わらない．もじ自らが関わる医学ジャ1ナルが製薬会社の学術広告論文集のようなものでよいと考えているなら，一般メディアが，読者本位（部数·視聴率本位）の報道をすることを責めることはできない.医療費が抑制されるなかで，メディアは，医師への過大な要求と医療の安全性への期待を無責任に拡大していると非難される．医療が絶対的に欠乏していた時代には医療は絶対的に必要だった．しかし医療がその守備範囲を拡大し局所的な飽和と欠乏がもたらされている現状では，医療内容とともに医療そのものの意義が問い直されなければならない．一般メディアの医療報道を改善する第一歩は，学術専門誌にジャーナリズム満神を回復することから始まるだろう．