高血圧と心疾患-高血圧はなぜ心疾患の危険因子なのか-

摘要

高血圧がなぜ心血管系の危険因子となるのかについてはよく理解されているようでも,いざその詳細を述べるとなると意外によくわかっていない点も多いのである.高血圧は心肥大(心筋リモデリング)と心筋梗塞を引き起こす基盤となるが,これには血圧による力学的な機序だけでなく,神経体液性因子の存在がその全体像を複雑にしている.この心血行力学的作用と神経体液性因子は深く関連しあい,しかもフィードバックをかけながら悪循環をつくっていき,当初は合目的な適応現象であったものが,時間の経過につれ"不適応現象"となっていくのである.心筋も血管も形態学的に線維化が進行し,この線維化は心臓と血管の弛緩,拡張を阻害し,形態的にも心血行動態的にも負の作用をもたらす.そして最終的には,心臓はポンプ失調,血管は動脈硬化という状況に陥り,死亡率の増加につながることになる.したがって,治療は両面から攻めていくことが肝要となる.