諸外国にみる医師の自律的管理制度と裁判外紛争処理制度

摘要

医療事故·過誤から患者の命を守り，事故原因を究明し，個人的要因による事故を防止するため， 医師の法的管理が必要である.そのためには，刑事·民事·行政の手続きがある.刑事手続きのみが調査を伴う.刑事処罰は，個人の過失を証明し，その個人による事故·過誤の反復を防ぎながら，社会や同業者に対する"見せしめ"によって事故発生の抑止を目指す.実際には，警察に対する遺族等の告訴や医師の異状死届出を受けて警察が捜査し，検察官が業務上過失致死傷罪の成否の観点から起訴の要否を判断する.医療側に重大な過失や注意義務違反があり，その結果損害が生じた証拠が十分と判断された場合に起訴される.しかし，診療関連死に対する刑事手続きは，医師の警察への届出が捜査の端緒となるため，医師が届出を躊躇する.