動脈硬化と細胞外マトリックス

摘要

細胞外マトリックスとは細胞から分泌され,蓄積した複雑な重合体であり,コラーゲン,エラステン,プロテオブリカン,グリコサミノブリカンなどからなる.正常血管においては平滑筋細胞とともに中膜の主要な構成成分であり,構造を支持すると同時に平滑筋細胞を収縮型に保つ役割を担っている.動脈硬化病変においては肥厚した内膜中にも蓄積されるが,正常血管とは組成が異なり,平滑筋細胞を合成型に形質変換させ,増殖·遊走を促進する働きを示すようになる.また,MMPによる細胞外マトリックスの分解も平滑筋細胞の増殖·遊走を容易にさせたり粥状病変を不安定化させるなど,動脈硬化病変の形成や性状の決定に深くかかわつている.すなわち,動脈硬化において細胞外マトリックスが果たす役割は重要であり,その制御機構を解明することにより治療ターゲットとなりうる.