テロメァによる細胞周期制御

摘要

正常な細胞周期の進行を保障する染色体末端の保護は，テロメァのきわめて重要な機能であり，その破綻は 細胞周期の停止や細胞死を引き起こす.しかし，テロメァ保護の破線による細胞周期の負の制御が,個体の生存にとっては一見有利に働く局面も存在する，この知見は，DNA複製に依存したテロ メァ短縮と細胞老化と の関係によってもたらされた.すなわち，テロメァ短縮に伴ぅテロメァ保護の破綻によって引き起こされた細 胞周期停止が，際限ない細胞の増殖を防ぐことでがh化を抑制し，個体の生存に貢献している.加えて近年， 著者らのグループは細胞周期M期(細胞分裂期）の停止がテ口メァ保護の破綻を誘導し，これによつてM期停 止細胞のがh化が抑制されるという，類似した機構の存在を提唱した.本稿ではテロ メァ末端保護に関する最 新の知見を踏まえながら，テロメァ末端の状態が細胞周期?細胞の運命を制御する機構について概説したい.