インクレチンの心臓に対する作用

摘要

近年，心筋細胞，心内膜.冠動脈の血管内皮細胞や平滑筋にGLP-1の受容体発現が証明され：インクレチン関連薬の心保護効果が期待されている.心筋'心機能への作用として.GLP-1は心筋細胞内のCAMPを増 加することにより心筋収縮力を高め，また，受容体非依存性の作用としてNO産生を促し，GLUT1を介した糖取込みを増加させ心機能改善作用を示すことが証明されている.心拍数に対する影響としては，交感神経や中枢神経系を介して心拍数上昇作用を示す.このほか，虚血心筋に対する保護効果も報告されており，虚血心筋のアポ卜一シス抑制など，さまざまなメデイエ一タ一を介した心筋保護作用の関与が推定されている.DPP-4阻害薬も血中のGLP-1濃度を上昇させることからGLP-1と同様の作用を有すると考えられるが.GLP-1受容体作動薬とは異なる作用を発揮する可能性も期待される.GLP-1の心臓への作用はGLP-1ァゴ ニス卜によっても認められ，その作用機序は受容体依存性と受容体非依存性の経路により調節されている.現 在.日本において2型糖尿病やメタボリックシンドロームの患者数は増加の一途をたどっており.それに起因 する心血管疾患の予防は重要な課題である.そのため，全身に多彩な作用を有するDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬は心臓への作用だけでなく，血糖.脂質，血圧など心血管疾患の危険因子を軽減させ.心血管系イベントの抑制にも効果が期待できるものと考える.