インクレチンの脳保護メカニズム 虚血性脳損傷に対するExendin-4の脳保護作用

摘要

糖尿病治療新薬として近年臨床応用されているGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬のEx-4 (Exendin-4)は，膵beta細胞保護作用，心筋梗塞巣縮小効果，神経変性障害抑制作用などのさまざまな臓器保護作用を示すことが報告されている.脳保護作用に関しては虚血侵襲や神経毒による神経細胞死の抑制効果が 報告されている.急性局所脳虚血再灌流障害において，Ex-4は脂質過酸化代謝産物や酸化的DNA障害といつた酸化ス卜レスを抑制する.さらに，ミクログリアの活性化とそれに伴う炎症反応を抑制することも明らかにされている.また，Ex-4はGLP-1受容体に結合し，cAMP(cyclic AMP)を介する細胞内シグナル伝達系を 活性化し，転写因子のCREB(cAMP responsive element binding protein)のリン酸化を促進することで細胞保護作用を有する蛋白質合成を誘導し，脳保護作用を発揮することが明らかにされている.今後もさらにEx-4の脳保護メカニズムが解明されていくことで，将来的に脳保護薬としての臨床応用が期待される.