大学病院の行方

摘要

非営利的な経営体が多額のむだな費用を放置し，また収益を上げることに無関心であれば，早晩その経営体は倒れてしまう．したがって，合理的な手法によって経常を刷新し，業務の効率を最適化しつつ収支の均衡をめざすのは当然である．しかし，そのような改革を最優先にすると，本来の目的としていた所から財務上の目標達成へと，組織の文化を変換しがちである．本来の目的が手段となり，手段があたかも目的のようになる．変化は長期的に組織体に大きなダメージを与えかねない．それは，営利企業にさえも起こりうることは，たとえばアメリカの自動車会社の盛衰を措いたデイビッド·ハルバースタムの"覇者の騙り自動車·男たちの産業史"に余すところなく措かれているとおりである．