徘徊や摂食障害がみられたが，ついに衰弱し きるまで入院に至らなかった高齢女性の一例

摘要

筆者は卒後4年目から2年間，沖繙県にある離島診療所に勤務していた.医師，看護師，医 療事務員各1人体制で，24時間365曰島内で起こるすべての医療へ対応し，血液ガス，超 音波，X線一般撮影検査が施行可能である.無床診療所であり，これ以上の精査や入院加療 が必要な場合は沖繙本島まで片道2時間の船か，緊急時はドクターへリや自衛隊機での航空 搬送を要する環境である， 症例：78歳，女性. 既往歴：高血圧（X—14年?） 内服歴：アムロジピン（アムロジン?) 2.5mg1錠分1生活歴?患者背景：生まれは沖繙本島，結婚後は50年以上島内暮らし，X — 5年に夫と死別 してからは独居で，遺産や年金などもあり，経済的に困窮してはいない. 現病歴：X年Y月に義妹より，「"昔の男に追いかけられている"，"家のお金が盗まれた"な どと本人が自分の家に押しかけてくる」と相談があった.その2日後に本人が定期受診した が，「最近泥棒が多くて困る」と興奮気味に話していた.当日施行した改訂長谷川式簡易知能 評価スケール（以下，HDS-R)は20点で，身体所見，血液検査ではとくに異常は認めなかつ た.器質的疾患のさらなる精査のためには，本島の総合病院への受診が必要であると考えら れ，本人にも事情を説明したが，「何も困ってない のに，どうして本島の病院に行かないといけない のか」と拒否的な態度であった.