細胞移植：心臓病における臨床応用への潮流

摘要

再生医療という用語は，2000年に使われ始めたばかりであるが，今や生物学や医療の世界にとどまらず，広く一般の方々にまで知られるようになつている.なかでも心臓病への再生医療の臨床研究は非常に活発に行われており，1，000例を超える方々が臨床研究に参加している.しかし，細胞移植という方法による心臓再生療法は，研究によってはその効果が認められないものもあり,まだまだ解決されなければならない問題が数多く存在していることが明らかとなり，再生医療への過剰な期待が収まったようである.現在，臨床研究のsystemic reviewが複数行われ， 安全性·実施可能性·有効性は確認され，継続して検討すべき項目が具体化されてきている.対象とされる疾患も，急性心筋梗塞から重症心不全にまで広がっている.本稿では，世界および日本における心臓病に対する再生医療の臨床試験の現況を概観し，現在， 筆者らがプロ卜コールを作成している再生医療と人工心臓治療を組み合わせた臨床研究の現状を報告する.