肝静脈根部の剝離中の肝静脈損傷

摘要

厳格な適応：肝静脈根部での損傷は致命的であり，不必要な剝離は行わない.予防することが最も確実な対処法である：常に基本手技を励行し，危険が予知される場合には決して無理をせず，血流コントロール法に必要な処理を先行させる. 損傷した場合には：まず圧迫止血を行い，肝臓外科に習熟した上級医に連絡し，冷静に視野の確保を行い，損傷部を直視下で縫合閉鎖する.肝静脈はグリソン系脈管に比べ脆弱であるため，肝 静脈根部での安易な操作は損傷のリスクが高く ，損傷 させると致命的な大出血を引き起こすことになり， ショック，長時間の肝虚血?門脈うつ滞などを引き起 こし，肝不全の要因となる.肝静脈根部の剝離を行う 際には，まずは適応を厳格にすることが重要であり， 十分な視野のもと，直視下での慎重な操作により周囲 を十分に剥離露出してから処理することが必須であ る.この操作を怠った場合には，損傷時の対処は極 めて困難である.