軟骨化生を伴った乳癌の1例

摘要

骨·軟骨化生を伴う乳癌はきわめてまれで，腫瘍の組織発生，分化傾向，治療，予後など，いまだ不明な点が多い．筆者らは軟骨化生を伴った左乳癌の1例を経験し，若干の文献的考察を加え報告する．患者：63歳，女性.主訴：左乳房腫瘤.家族歴：特記すべきことなし．既往歴：特記すべきことなし．現病歴：1999（平成11）年10月上旬，左乳房のしこりに気づいた．同年10月15日に当科を受診し，精査の結果，左乳癌の診断を得た．同年11月11日，手術を目的に入院となった．入院時身体所見：身長147cm，体重51kg，体格は中等度．左乳房C領域に1．5 × 1．6cm大の弾性硬の腫瘤性病変を認めた．病変周囲の皮膚の変化，胸筋固定を認めず，同側腋窩リンパ節の腫大はなかった．乳頭の異常分泌も認めず，その他，身体的異常所見はなかった．