地域医療の崩壊をいかに防ぐか 和歌山県那智勝浦町立温泉病院再生事例から見えるもの

摘要

私は平成17年3月-22年3月の5年間，母校.和歌山県立医科大学(以下，和医大と略する）の第11代学長(平成18年4月の独立行政法人化後は初代理事長）として，和歌山県内の地域医療を死守すべく，種々の工夫と努力を重ねてきた.その成果として，私の在任期間は，①公的病院の閉鎖がない，②救急患者のたらい回しがない，③産科難民がない，これらを満たしている全国唯一の県として注目されてきた.本稿では，和歌山県における地域医療の問題点とそれらに対する工夫と努力（対策)，とりわけ困難であった那智勝浦町立温泉病院(以下，町立病院と略)再生事例を紹介し，皆様が地域医療再生を考えるうえで少しでも参考にしていただければ幸甚である.