化学性呼吸調節研究の進歩

摘要

デボン紀後期（約3億6,700万年前）に起こつ た海洋の広範な溶存酸素の喪失は，海生生物の 大量絶滅と四足動物の陸生を促進させた.陸で は水中よりもCO_2の排出が制限されるため， 動物は低酸素に対する換気応答に加えて，血液 中のCO_2濃度を一定に調節する仕組みを備え ている必要があつた.その仕組みを解き明かす うえでマィルストーンとなったCorneille Jean Francois Heymans (1892?1968)の業績「呼 吸調節に対する頸動脈洞および大動脈機序に よって行われる役割の発見」に対して，1938 年にノーベル生理学.医学賞が贈られたのであ る.ノーベル賞史上，呼吸生理学分野で唯一の 受賞である.