3臨床疫学1）臨床疫学の基礎とその応用

摘要

疫学は「人間集団における健康状態とそれに関連する因子の頻度の観察」と定義することができる．古くは感染症の分布を明らかにし，その危険因子を回避することによって予防に導く手法であったが，慢性疾患（いわゆる生活習慣病）や長寿（健康で自立した高齢者の生活）なども観察の対象となって久しい．古典的には疾病の発生状況を人（どのような人に多発しているか．性，年齢，職業，生活習慣など），場所（多発地域があるか），時間（増加傾向や減少傾向，流行の周期性など）の3つの視点で観察していた．しかし，①とくに危険因子への曝露から疾病発生までの期間が長い慢性疾患を対象とした研究の必要性より，種々の研究方法が開発されたこと，②コンピュータの発達により数値計算が容易になったことの2点により，最近の20～30年間で方法論としても，研究成果の面においてもめざましい発達を遂げてきた．