30万時間超使用後のCrMoV鋳鋼製タービン蒸気弁の脆化評価

摘要

長期間使用中にリンなどの不純物元素の粒界偏析による脆化の進行が懸念される一方で，炭化物の粗大化や転位組織の回復による脆化の抑制効果も排除できない．これまでの研究では，累積運転時間が10 万時間から20万時間程度の長期使用部材を対象としたものであり，さらに長時間運用した場合に脆化が進行するか否かは，必ずしも明確ではなく，化学成分，使用時間，使用温度，その結果として生じる粒界·粒内組織状態を踏まえた上で議論することが重要である．本研究では，火力発電所において530°C程度の高温で30万時間超使用された組合せ再熱弁より採取した使用材およびそれを585°Cで4457時間加熱時効処理して，約40 万時間の使用を模擬した時効材を用いて，組織観察およびシャルピー衝撃試験を実施し，軟化および脆化の度合いを明らかにするとともに，試験結果に基づいて高温下での長期使用が焼き戻し脆化に及ぼす影響を考察した．