水分ストレスシートを用いた果樹の水分状態の 測定法について

摘要

モモゃブドウ、ゥンシユウミカンなどの果樹では、栽培する際の水分管理が大変重要で、樹の生育ステ—ジゃ、土壌などにより適した灌水が異なる。多くの果樹では、果実の成熟期に漼水量を制限したほうが、果実内の糖蓄積が促進され糖度の高い果実となることが知られている。近年では、温州ミカンの栽培において透湿性マルチと点滴灌水によるマルドリ方式が開発され、高糖度の果実生産につながつている。また、果実成熟期の乾燥後の過剰な雨水は、果実の劣果ゃ果肉褐変症などの生理障害の発生要因といわれている。これらのことから、以前より、果樹の樹体の水分生理を理解するため、水ポテンシャルの測定や、TDR水分計などが用いられてきたが、非破壊で測定できないことや、測定装置のコストなど様々な問題があり、実用化されていない。今回紹介する森永ら(文献)は、これまで温州ミカンで検討され、葉からの蒸散により表示シートの色が変化する「水分ストレス表示シート」を用いて、落葉果樹を含むいくつかの果樹で水分ストレスをモニタ—することができるかなどを検討している。この表示シ—トは、葉の裏などに貼り付け、温州ミカンなどの樹の水分状態を把握できるとされており、すでに製品化されているが、温州ミカン以外の樹体での詳細な検討は行われていない。そのため著者らは、この「水分ストレス表示シート」(以降、表示シート)が、ブドウ、モモ、二ホンナシ、温州ミカンにおける水分ストレスを知る方法として適用できるかどうか、また、蒸散速度との関係について検討した。