(S227)低炭素ベイナイト鋼のき裂進展開始抵抗·き裂伝播抵抗におよぼすBain unit size の影響

摘要

鋼のマルテンサイトおよびベイナイトは高強度を示すが, 低温で靭性が大きく低下し, 脆性的に破壊する. マルテンサイト·ベイナイトは, ラス, ブロック, パケット, 旧オーステナイト粒といった種々の大きさの微視組織で構成されており, いずれの組織単位が低温靭性を支配するかについては様々な議論がなされている. 我々は, 低炭素マルテンサイト鋼および低炭素ベイナイト鋼の低温脆性破壊挙動を調べ, マイクロクラックの伝播が異なるBain 関係のバリアント間の境界で停止すること,同じBain 関係のバリアントの集合の大きさ (Bain unit size)が減少するにつれて延性-脆性遷移温度が低下することを明らかにした1,2). Bain unit size の減少によって延性-脆性遷移温度が低下した要因として, き裂進展開始抵抗とき裂伝播抵抗の増大が考えられるがその詳細は不明である. そこで本研究では, J 抵抗曲線法によりき裂進展開始抵抗とき裂伝播抵抗におよぼすBain unit size の影響を調べた.