エージェント技術による鉄鋼生産計画支援（第2 報）-熟練者と非熟練者の関係のモデル化－

摘要

本稿では，鉄鋼生産の計画業務において，エージェント技術による計画立案支援システム構築に向けてこれまでに構築してきた熟練者と非熟練者の関係モデルについて紹介する．また，熟練者エージェントによる非熟練者への支援の第一歩として，数理計画手法を用いた熟練者と非熟練者によるスケジューリング結果についても紹介し，熟練者エージェントの有効性について議論する．鉄鋼生産は複数工程を有する多段階プロセスであり，また材料?素材調達や出荷先はグローバル化してきており，システムが大規模化するだけでなくその複雑さも増大している．さらに，近年の受注の多品種少量化，そして変種変量化への移行は，鉄鋼生産システムをますます複雑なものとしている．このような生産環境の複雑化にともない，鉄鋼生産における計画立案過程における複雑さもますます増大している．生産計画?スケジューリング問題においては最適解を得るのが困難であり，経験等に基づいて何らかのルールを形成しておき，このルールによって許容しうる解を導くのが一般的であるが，計画?スケジューリングに用いるルールの作成は，熟練者の経験によるところが大きく，計画立案過程における熟練者の役割は無視できない．いわゆる団塊世代の定年退職による熟練者不足への対応や，高級鋼製造による他国との差別化路線の推進のために，これまで熟練者が果たしてきた機能を代替?補完する必要があり(1)，エージェント技術による生産計画支援システムの構築が期待されている(2)．著者らはこれまで，計画業務における熟練作業者と非熟練作業者の違いをモデル化し，熟練者特有の機能の整理?分析を行ってきた．前報において，製鋼工程を対象とした熟練者モデルの構築と製鋼計画支援の可能性について報告した(3)．本稿では，これまでの成果を基に，熟練者と非熟練者の関係をモデル化するとともに，熟練者エージェントによる非熟練者への支援の第一段階として，数理計画法による熟練者と非熟練者によるスケジューリング結果についても紹介する．