真空浸炭の炭素浸入機構

摘要

近年，従来のガス浸炭法に代わり，真空浸炭法が粒界酸化が生じない，浸炭時間が短くランニ ングコストが安い等の利点のため普及し始めている．しかし，真空浸炭中の表面反応に関しては2， 3 の異なる実験結果があり，統一的な見解は得られていない． 前報1)にて，薄板を用いた試験から，真空浸炭における炭素浸入が被処理材表面に浸炭ガスの 分解で生じた黒鉛が付着し吸収されることで起こっており，被処理材表面では黒鉛と被処理材の 局所平衡が成立していると推定した．しかし，被処理材表面に生成した黒鉛を確認できておらず， 真空浸炭の浸炭機構について決定的な証拠は存在しない．本研究では，真空浸炭途中で凍結した 試料にGD-OES 分析を施し，真空浸炭中の表面分析を試みた．