肛門管癌：総論一肛門管にかかる悪性腫瘍一

摘要

肛門管は発生学的に外胚葉性の原始肛門と内胚葉性の原始直腸が癒合して形成された部位であり，その境界が肛門縁より約2cmにある歯状線である.大腸癌取扱い規約によると，肛門管は恥骨直腸筋付着部上縁より肛門縁までの管状部と定義されている.通常成人における肛門管の長さは約3-4cmである.肛門管は組織学的には直腸粘膜部，移行上皮部(重層立方ないし重層円柱上皮よりなる)，肛門上皮部(重層扁平上皮で毛根·皮脂腺·汗腺を欠く ）に分けられる.歯状線には幾つかの肛門陰窩があり， 粘膜下層から括約筋層にかけて分布する肛門腺(重層円柱上皮により覆われている）が開口している.肛門管はこのような多様性に富んだ上皮により構成されているため，これらを発生母地とする癌の組織型は表1のごとく多彩であり， その組織型と進行度に応じて治療法を選択することが重要である.