乳癌細胞の悪性化進展における亜鉛卜ランスポ一タ一の役割

摘要

亜鉛はわれわれの身体の機能が正常に働くために欠かせない必須微量元素のひとつである.亜鉛の膜透過の調節には亜鉛卜ランスポーターが関与しており，現在，哺乳類の亜鉛卜ランスポーターは23種類存在し,-亜濃度の調節·維持だけでなく，多様な生理作用をもつことが明らかにされている.さらに，近年，疾患の 発症や進行における亜鉛トランスポーターの関与が注目され，とくに乳癌において癌難治化の要因となる上 皮-間葉細胞分化転換や浸潤?転移に関与する運動性に，亜鉛トランスポ一ターが大きく寄与するとの報告が あいついでいる.また：癌細胞に発現している亜鉛卜ランスポ一タ一は癌悪性度の診断と治療の分子標的にな ることが期待される.本稿では乳癌における亜鈴卜ランスポーターの病態生理学的役割と，乳癌治療ターゲッ 卜の可能性について最新の知見を紹介する.