RGB 色空間での明度と彩度に対する任意処理の実現

摘要

カラー画像·映像信号処理では，色合いを決める色相を処理前後で保存する必要がある．色相を保存するには，HSI色空間，YC_bC_r色空間等の色相を直接取り扱える色空間で処理を行えばよい．それらの色空間においては，色相を保存し，明度や彩度に対して柔軟な処理を行うことができる．しかし，カラー画像の取得·表示系は RGB 色空間で行われるため，それらの色空間での処理では，色空間の変換が必要となる．また，他の色空間での処理では，その処理結果が RGB 色空間の色域外となる場合もある．これらの問題点は，RGB 色空間で色相を保存した処理を行うことができれば解決される．その解決法として，S.K.Nailk らが RGB 色空間で色相を保存できる処理形態を明らかにした．この処理形態では色相の保存と RGB 色空間での表示可能性を保証し，かつ明度に対しては任意の階調値変換を施すことができる．しかしながら，彩度は明度の処理に付随して決定されてしまうため，処理後のカラー画像の彩度が低下するという欠点を持っている．本論文では，色相を保存した上で，明度と彩度に対して独立に処理が可能な処理形態を新たに提案する．すなわち，明度と彩度に対して独立に任意の階調値変換を施すことが可能となる．提案する処理形態の有効を明らかにするために，明度と彩度に対して独立に S 型階調値変換を施すことにする．S 型階調値変換には 2 つのパラメータがあり，その調整によって多様な階調値変換を可能としている．本論文では、明度と彩度に対する S 型階調値変換におけるパラメータ設定についても検討を加え，コントラストとカラフルネス共に優れた画像を得る方法を明らかにする．