輻輳眼球運動の有無に依存しない物体奥行き運動に対する脳活動：fMRI計測による検討

摘要

自らに対して奥行き方向に運動する物体の視覚による検出は，接近物体の回避の際など生態学的に重要な役割をもつ．この際，入力としての網膜像情報は，眼球運動を含む自らの運動と物体運動それぞれに由来する運動成分を共に含むため，原理上，網膜像の運動から眼球運動由来の成分を差し引く必要がある．本発表では，未だ明らかでない眼球運動に依らない物体奥行き運動推定の神経機序解明に向けて，輻輳性眼球運動の有無に依存しない，両眼性手がかりに基づく物体奥行き運動の神経応答をfMRI脳機能イメージングにより分析した．予備実験の結果，輻輳眼球運動の有無に依らず物体奥行き運動に選択的な脳賦活が解剖学的に視覚野V3Aに対応する脳部位付近に認められた．一方，物体奥行き運動または輯摸性眼球運動により生じた網膜像運動に対する選択的な賦活が視覚野V3BおよびhMT+対応脳部位付近に認められた．