波長分割多重方式によるY-00（光通信量子暗号）の大容量化に関する検討

摘要

今年6月に，元CIA職員のE．Snowdenの証言から，英国政府通信本部が光ファイバ回線から信号光を盗み出し，通信情報を盗聴していたという衝撃的なニュースが報じられた．専門家のみならず，一般の方も，光ファイバ回線の危険性を認識しつつあり，光ファイバ回線からの盗聴を防御する技術開発がますます重要になってきている．特に最近，アメリカ国家安全保障局(NSA）や国防高等研究計画局（DARPA）がサイバーセキュリティの研究開発に注力しており，DARPAはこれまでの物理暗号の研究開発方針を大きく転換し，通信回線からの盗聴防止，および，高い通信性能（伝送容量1～10Gbit／s，伝送距離1，000～10，000km）を目標とした物理暗号プロジェクトを実施している．我々は，本目標性能を実現できる物理暗号Y-00（光通信量子暗号）を，理論と実験の両側面から研究開発してきた．これまで，安全性評価としてランダム暗号性評価実験，伝送容量Gbit／S以上での長距離光ファイバ通信検証を行った．また，Y-00暗号トランシーバを試作し，2.5 Gbit／sの強度変調Y-00暗号トランシーバの2ケ月間に渡る屋外敷設光ファイバ回線での通信試験に成功した．更に，波長分割多重（WDM）方式による大容量化を実証し，最大容量40 Gbit／s（4×10 Gbit／s）の伝送実験に成功した．本稿では，WDM方式による更なる大容量化に向けた検討を行ったのでその結果を報告する．