純水を取り巻く技術と現状－最新の純水精製技術：真のメンテナンスフリーの為のスケーリング防止機構付きEDI

摘要

EDIは従来のイオン交換処理に比べて数々の優位点があり純水化処理の標準として確立しつつあるが、大きな克服すべき点が一つあった。 供給水中にカルシウムや溶存炭酸ガスなどが多く含まれる水が供給されると、これらの成分の影響を受け性能低下を起こすことである。 たとえば、水中のカルシウムや溶存炭酸ガスが高い硬水域が広く存在するヨーロッパでは、ミリポアが以前日本国内で販売していたRO-EDI純水装置Milli-RXシリーズは、数日の運転で水質低下を起こす。 日本国内のような軟水域においても、Milli-RX設置時には前処理として軟水器を薦めていた。 また他の純水装置メーカー各社も小型から産業用に至るまでEDI純水装置には何らかの軟水処理が施されている。 軟水処理は水中のカルシウムなどの硬度分をナトリウムなどに置き換える役割をするが、その導入のための初期費用増大はむろんのこと、カートリッジ交換の手間、塩化ナトリウムの補給など、多くのデメリットがある。 工場などに設置された場合は専門のメンテナンス担当者がいることが多いが、研究室などの場合、ユーザー自身で純水装置をメンテナンスするケースが多く軟水装置の導入は過大な負担となる。 また産業用の大容量の純水システムが、設置場所の水質にあわせて装置をオーダーメードできるのに対して、研究室用などの小型の純水装置では同一製品を、軟水装置などのオプションなしで広い供給水質に対応できる必要がある。そこで、世界各地において軟水処理なしで純水を安定的に供給できるEDIの開発が行われた。 本報では最初にEDIの基本概念を説明し、続いて広い範囲の供給水質にも対応可能な最新のEDIテクノロジーについて述べる。