アナログ回路を設計できるようになろう

摘要

みなさんは，回路設計をするとき，回路を先に考えますか？ それとも信号を先に考えますか？ これは，回路設計以前の問題ですが，とてもたいせつな問題です．なぜたいせつなのかというと，それは，何が目的で，何が手段なのかを考えていることになるからです．答えを言ってしまうと，電子回路の目的は信号を処理することです．その代表的な処理には，増幅やフィルタリングがあります．信号の周波数成分の分析（どんな周波数の成分が，どのくらいのレベルで含まれているのかを分析すること）は，極端に言えば，フィルタリングの応用です．電子回路の目的は，信号を処理することですが，一方で電子回路を使用する目的も存在するはずです．このように「上流の目的は何か？ 」を考えていくことで，最終的に，「やりたいこと」という頂点に到達します．この頂点の「やりたいこと」から，下流の「手段」へと進んでいく設計手法を「トップ·ダウン設計」と言います．現在の種々の大規模システム設計は，多くの場合，このトップ·ダウン設計という思想に基づいて行われています．回路設計という行為が，ただ技術力を誇示したいためだけの自慰行為になってしまわないように気をつけたいものです．