水中自動裏波溶接法の開発：超撥水材利用による水中自動裏波溶接技術の確立

摘要

国土の周囲を海に囲まれた我が国にとって、海洋の利用は生活や産業にとって欠かせないものである。 第1表に示すようにマンガン団塊、海底熱水鉱床、海水溶存ウラン等の海洋鉱物資源や石油·天然ガス等の海底エネルギー資源の海洋資源採取施設、物流基地、エネルギー施設、レジャー施設、廃棄物処理施設や海上空港等の海洋空間利用施設、海洋温度差発電、波力発電、潮流発電、海洋農場等の海洋資源活用施設など、海上利用の期待は今後ますます大きくなり、これら海上構造物建設では海中での溶接技術が建設自体の可否を決定する重要な技術である。 本来溶接は水を嫌い水中や海中では良好な溶接が出来ないため、さまざまな工夫を行った水中溶接技術が開発されて－いる。 海中で溶接強度を保証した実用に耐える施工を行う場合には、現状では、造船·鉄鋼メーカが参加して1995年から研究開発が開始された超大型浮体構造物（メガフロート）の試作で実施されたように溶接部のまわりを筐体で囲い水を抜きドライな状態で溶接を行う乾式法しかなく、この方法では、周りの水を抜く工事のために大がかりな装置や時間を必要とし、また工事中に浸水する場合を想定した十分な安全設備も必要など実用上の課題もある。 そこで、コストのかからない信頼性のある湿式水中溶接法の開発が望まれていた。 当社ではこれらの要求を満たす溶接法として超撥水性の裏当て材と小型自動溶接機の組み合わせで開先ギャップ5～10mm、日違い0～3mmという実用的な開先部に対応可能な水中自動裏波溶接技術を開発した。 本稿では、水中溶接の現状及び当社で開発した自動溶接法について解説する。