Co-Fe-B合金薄膜の磁気緩和定数測定

摘要

Co-Fe-B合金薄膜を種々の組成，膜厚，熱処理温度を変化させて作製し，その磁気緩和定数をFMR測定により見積もった．Co-Fe-B薄膜の磁気緩和定数はB濃度の増大とともに増大することが分かった．また，Coリッチのfcc組成の試料ではbcc組成の試料に比べ，磁気緩和定数が大きくなった．Co-Fe-B薄膜の膜厚が非常に薄い場合に，厚い場合に比べて磁気緩和定数が5倍程度大きくなった．熱処理温度を増大させると，Co-Fe-B薄膜の結晶化温度で磁気緩和定数が一桁程度増大した．これらのCo-Fe-B薄膜の磁気緩和定数の組成，膜厚，熱処理温度等による変化の物理的メカニズムは,現在のところ明らかでない．また，磁気緩和定数X飽和磁化の二乗（αM_s~2）をパラメータとして，Co-Fe-B薄膜のスピン注入磁化反転材料としての有用性を考察したが，高TMR比と低磁気緩和定数をともに実現する条件は見出せていない．今後，磁気緩和定数の物理的起源の解明を進めるとともに，Co-Fe-B薄膜の最適組成,作製条件等の検討を進めていく必要がある．