物体色の理論限界と現実の物体色－テレビ受像機の原色色度設計への応用－

摘要

本研究は，テレビ受像機の原色色度設計の基礎検討として，色再現の対象となる物体色の色域を明確化した．最初に，物体色色域の理論限界を，最明色，及び，より現実に合わせるようにモデル化された擬似的な物体色の色域限界（擬似義明色）により求めた．また，現実の物体色色域を，Pojnterの色域に加え，色再現評価用標準物体色分光データベースSOCSにより求め，理論限界と，現実の物体色色域を明確化した．また．Pointerの色域とSOCSの色域の特徴を明確化した．また，物体色色域の理論限界と，SOCSの色域の比較を実施し，SOCSの色域は，一部の領域では理論限界に近い領域まで分布していること，また，未だ理論限界まで広がっていない領域も多く存在することを明ら別こした．さらに，HDTVテレビ放送方式の色域と，SOCSの色域，擬似最明色の比較を実施し，HDTVの色城は，自然物の色をほぼ包含すること，及び，HDTVの色域が，人工物，擬似最明色に対して不足している色域を明確化した．最後に，これらの知見に基づいて，SOCSの色域をほぼ包含するテレビ受像機の原色色度設計を試みた．