資源と環境に配慮したナノ酸化物熱電変換材料

摘要

熱から電気を直接取り出せる熟電変換·材料は，工業炉，自動車·バス·トラック·飛行機，公共施設·学校·病院·家庭などからの廃熱を電気に変えて再利用することができるため，化石燃料の使用量を低減して二酸化炭素排出抑制，地球温暖化防止のために貢献できる材料である。日本が発信する「酸化物熱電変換材料」は，従来想定されていた宇宙探査機用発電機などの特殊な使用環境ではなく，大気（酸素を含む）環境下で使える材料である。自動車·トラック，工場廃熱，焼却炉などの廃熱回収·電力変換を想定すると，まさに酸化物系材料しか使える材料がないといっても過言ではない。ビスマステルル（Bi_2Te_3）系やスクッテルダイト（CoSb_3）系などの非酸化物材料は，高温大気中では酸化，分解などの変化を受けるため，保護のためにコーティングなどを施す必要がある。これが実際には大変な問題であり，コーティングの必要のない酸化物材料が開発できれば，これに勝るものはない。しかも，近い将来，有害·有毒元素を含まない，人や環境に優しい材料でないと使用できない社会がやってくることを考えると，少なくとも熟電発電用の熱電変換材料には，無害·無毒な元素からなる酸化物系材料が強く求められる。これまで開発されてきた高効率な非酸化物材料は，ほとんどが有害·有毒な重元素を含んでいる。また，資源的に見ると，Teのクラーク数は2×10~(-7)と白金（Pt）の2/5程度しかない。最近開発されてきたナノ構造材料にはTe化物が多いが，今後熟電変換技術が大きく普及してくると，資源的な問題に突き当たることは間違いない。