笠ケ岳

摘要

山好きの君が登りたがっていた北アルプスの笠ヶ岳に登ってきたよ．君と一緒に登りたかった．イヤー，キザだなぃ．やっぱり照れくさい．昔，ロマンチストの登山家がいて，こういう書簡体の文章を書いていた記憶がある．思い出して，ちょっとまねてみたけど，俺とお前さんでは似合わない．やっぱり普段通りでいこう．五男坊の五郎だからゴロサン。 ゴロサンが田舎町で10人足らずの「山の会」を組織して，「隊長」に収まったのは9年前と聞く．ゴロサンは俺には山のことなど一言もいわなかったし，俺はその頃,山登りのようなシンドイことはバカ者のすることだと思っていた．それが，6年前，魔が差したというのか，南アルプスへの市民登山会のポスターを見て，行ってみたいと思ったのだった．そのテストとでもいうべき千mほどの山への登山で，みごと挫折してしまった．体を鍛えていなかったし，そもそも山登りというものが，参加者が一列に並んで，全員同じペースで登っていくなんていうことも知らなかったのだから，いい気なもんだ．もちろん，本番は辞退，50代半ばだったから，俺の肉体はこのまま老いさらばえていくだけかと思うと，ちょっと情けなかった．それで，一念発起して，女房をさそって，近くのせいぜい千mまでの里山登りを始めた.それとダイエットが効いて（笑うな!)，なんとか山登りができる体力がついた．いろいろあったが,結局,挫折した登山の世話をしてくれていた山登りの会に加入したのだった．20年の歴史があって，会貫もそ好まま老齢化して，平均年齢が60歳に近いという典型的中高年登山者の会だが，みな元気がいい．私はいつもヒーフーと喘いで，落ちこぼれ寸前で参加しているのだが,今年の夏山登山が北アルプス．幾つかのコースが設定されたが，私は笠ヶ岳に手を挙げた.登りがきついと聞いて，双六岳にまず登って，尾根伝いに笠ヶ岳に行き，急坂を下るコースにした．猛女（もさ）連に混じっての登山でどうなるか心配だったけど，ゴロサンの登りたがっていた山という意識があって，がんばって無事登れた．尾根筋には花が咲き乱れ，暗に雷鳥も特別出演，雷鳴にも出会ってヒヤリ気分も味わえ，よかったよ.