生体内の情報伝達に関わる鍵化合物の合成と機能解析

摘要

生体において外界からの情報を受容し伝達する機構は，生命の維持に関わる重要な機能である。 例えば，光や臭いの情報を検知する視覚や喚覚といった感覚機構，生体防御のために微生物の存在·侵入情報を検知するシステムである免疫機構など，様々な信号伝達機構が我々の生体機能の維持に関わっている。 このような生体内の情報伝達機構の解明を目指し，情報伝達に関わる鍵化合物を合成することにより，有機化学的手法を用いたアプローチによる機能解析を私は行ってきた。 本論文では，視覚における受容体ロドプシン中のリガンド，11-cis-レチナールの配座解析について，光学活性な配座固定レチナール類縁体の合成，活性配座決定に関する研究を紹介するとともに，自然免疫における鍵物質である細菌由来の複合糖質リポ多糖／リピドAおよびペプチドグリカンの合成と，その認識機構解明に関する研究について紹介する。