電力に影響された都市ガス大手4社の24年3月期決算

摘要

東京，大阪，東邦，西部の4大手都市ガスはこのほど平成24年3月期決算（個別）を発表したが，減益幅に差はあるものの4社とも揃って「増収減益」だった。近年，都市ガス各社の決算は大口での自由化の進展や輸入LNG価格の変動で以前のような横並びは減っていた。つまり，以前は東京が増益だと大阪も増益，東京が減益だと大阪も減益といった同じ経過を辿っていたのだ。そういった傾向がなくなったのも束の間，当期ではまたガス販売は前年同期比微増微減といった前年並みの水準で，その一方輸入LNG価格は大幅増と似たような経過を辿り，4社は四つ子のような「増収減益」計上となった。凹凸のない味気ないといっていい4大手都市ガスの当期決算だったわけだが，当期で揃って減益となったのは輸入LNG価格の高騰が大きい。この1年のわが国の輸入LNG価格は全日本CIFで，昨年4月平均の5万6,271円／トンから今年3月は7万147円／トンへ，24.7％も上昇したのだ。「原料費調整制度」によって料金に反映される昨年1月分と同12月分の比較でも,4万9,761円／トンから6万6,706円／トンへ34.1％の高腰だ。この輸入LNG価格の大幅な高騰は，原油価格の上昇もそうだが福島第一原発事故に起因する電力業界での輸入量増加が大きい。電力各社が原発の稼働停止を余儀なくされ，その分LNG火力に頼ったためにわが国のLNG輸入量が増大→価格高騰となったのだ。スポットでのLNG輸入もこれまでわが国がLNGの輸入を開始して以来最大を記録し，そうした電力の動向が都市ガスの「原料費調整制度」にもろに影響した。都市ガス各社の当期は福島の原発事故と電力各社のLNG調達の動きに大いに影響されたといっていいわけだが，結局最後にLNG価格高騰の影響を受けるのは家庭用や産業用のエンドユーザー、都市ガス事業では，原料LNGの高騰分はすべてエンドユーザーに転嫁していい仕組みになっているからだ。その証左は，都市ガス大手4社が，来期の決算見通しで揃って「増収増益」を打ち出していることにも現れている。「原料費調整制度」等によるガス料金単価の引き上げを見込んでのもので，都市ガスのエンドユーザーはこの1年，ガス料金の値上げで苦しめられたが，　来期もそれは避けられそうにない。