米国非在来型天然ガスの急増で大きく変貌する世界のLNG市場

摘要

米国工ネルギー情報局（EIA）が10月8日発表した“Weekly Natural Gas Storage Report”によると，米国の天然ガス在庫は10月2日に3,658Bcf（10億立方フィート）となり，2007年10月末に記録した史上最高記録3,565Bcfを更新した。天然ガスは典型的な季節商品。需要期は11月～3月未まで。それまでは在庫積み増し期である。したがって，ELAは少し前から予告しているが「10月未（つまり10月30日時点の統計）には在庫は3,800Bcfとなるだろう」とみている。米国の天然ガス事情の変転は著しい。市場から眼が離せないのだ。2005年までは「米国の天然ガスはあと7～8年で枯渇する」といわれていた。「現在の調子でガス需要が伸びていけば，LNGの大量輸入で対応するしかない」。ところが，以前にも記者が指摘したことだが，2007年から米国の天然ガス生産量は年率9％で増加を始めた。現在も引き続き生産レベルは極めて高いのだが，需要の方はサッパリだ。不況で産業用需要がガタ減りである。当然需給はジャブジャブとなり，市況は下落する。2006年年初は9ドル／百万Btuだったものが，増産でその年の夏には5ドル台半ばとなった。ところが，2008年7月には原油147ドル／バーレルへの急騰を受け13ドルを突破した。しかし，原油急落で2008年初は4ドル台に。原油はその後70ドル前後に戻しているが，天然ガスは2009年8月には2ドル台にまで下げた。需給は引き続き大幅緩和なのに現在は4.9ドルと5ドルに迫っている。天然ガスは余剰だからLNGなど輸入しなくてもいいだろうと思うが，確かに2008年のLNG輸入は大幅に減少したものの2009年はまた増加している。どうしてこんなことになるのか，米国天然ガス事情を報告する。これは世界のLNG事情にも多大な影響を及ぼしている。