ATP-バイオルミネッセンス法による生物学的汚染度の迅速測定

摘要

これまで述べてきたATP法による環境バイオバーデン測定法の特徴を表3にまとめた。 用途に応じて測定手順が異なるため、検査に必要な時間はそれに応じて異なる。 とは言え、最も時間のかかる空中浮遊菌の測定でも、検査を実施したその日のうちに結果を得ることができる。 また、最も簡便なふき取り検査であれば専門的な技術や設備がなくても、いつでもどこでも検査が実施できる。 生菌数測定や空中浮遊菌測定は多少、操作が煩雑となるが、通常の微生物検査室で十分対応可能である。最後にATP法の長所·短所について述べる。 短所は、原理的に培養法による菌数との完全一致は得られない点にある。 培養法至上主義的な思想が蔓延する衛生検査において、この点はATP法普及の妨げになっている。 しかし、ATP法にはその欠点を補うに余りある迅速性というメリットがある。 生体関連物質をATP法ほど迅速·簡便·高感度に測定できる検査手法は他にない。この点で、ATP法は、従来の培養法では後追いにしかならなかった生物学的汚染度を、事故発生を未然に防ぐことのできる防衛的で実用性の高い検査項目へとステップアップさせる唯一の検査法であると言える。日常的な環境バイオバーデン試験法として、ATP法の利用価値は今後ますます高まるものと考えられる。