乳酸菌が生産する抗菌ペプチド，バクテリオシン

摘要

人間の生活に必要不可欠な微生物として挙げられる乳酸菌は，きわめて安全性が高く，発酵食品を中心とする産業利用が盛んに行われている。また，乳酸菌はヒトや動物の腸管内からも数多く見いだされ，プロバイオテイクスとしての有益な効果も持つことは周知である。乳酸菌は，有機酸をはじめ種々の抗菌物質を生産するが，なかでも，バクテリオシンと称される抗菌性ペプチドが注目を集めている。生物由来の天然抗菌物質（バイオプリザパティブ）を食品保存に応用する方法はバイオプリザベーションと呼ばれ，優れた性質を有する乳酸菌バクテリオシンは有望なバイオプリザバティブとして期待される。本稿では，乳酸菌バクテリオシンの構造や特性，生合成機構などについて説明するとともに，主に我々が見いだした新奇乳酸菌バクテリオシンやその応用例についても紹介する。