井上先生の言葉－「陰」の文化について－

摘要

この塗料は多くの分野に使用され，経済成長の優等生になったことはよく知られている。 　 ある日，上司のかばん持ちとして，基礎研究やクレ·トム処理のデータなどを携えて，井上幸彦先生の研究室にお伺いしたことがある。 先生を中心とした「塗料物性研究会」が発足した50年代後半の頃と記憶している。 先生はこれらのデータをさっとご覧になり，「よく実験した。 データはよくとれている。 ところで，君はこのデータから何を言いたいのか」と質問されました。 　 わたしは即答できず，思案にくれていると，続いて，「塗料物性とはデータを並べることではない。 そのデータが何を語っているか，それを読み取るのが塗料物性ということだ」　 そして最後に，「塗料物性は目方ではない。 たとえばデータを何十貫，何百賞積み上げようとも，それは塗料物性ではない。 ただ一行でいい。 メラミン一アルキド樹脂塗料が語りかけている自然の真理をよく受け止めること，それが塗料物性なんだ」とおっしゃいました。