通信ネットワークの保全性に関する検討－ノンパラメトリックな計算と分析精度の向上

摘要

筆者らは，これまでに通信ネットワークの故障データを用いた信頼性評価技術を確立し，体系化を進めてきた．特に，データ解析においてはフリーの統計解析環境Rを積極的に導入し，効率化を重視している．信頼性の中で，修理しやすさを表す保全性を評価する尺度については，修理時間分布のパラメトリックな統計モデル推定により，各種の計算が可能であることを筆者らは既に提示している．パラメトリックな推定は，パラメータと実際の保守アクションとの対応による意味付けが行えることや，乱数シミュレーションへの展開が可能という利点がある．ただし，最尤推定などの数値解析を伴うため初期値依存性があり，一回の試行で確実に最適解が得られる保証がない．一方，カーネル密度などのノンパラメトリックな統計モデル推定では，このような問題はないが，これに基づく保全性評価法は確立されていない．本稿では，カーネル密度を利用したノンパラメトサックな通信ネットワークの保全性評価を行う方法を提案する．また，その分析精度を向上させる方法についても検討を行う．提案方法により，パラメトリックな方法と概ね一致する結果が得られることが示される．