日本語母語話者成人と発達性構音障害児の摩擦音知覚における音響的手がかり

摘要

発達性構音障害の発生機序を探り，治療への示唆を得るため，日本語母語話者の/s/と/∫/の知覚における音響的手がかりの重み付けを検討した．成人42名（20-36歳）と発達性構音障害児2名（9-10歳）に/s/と/∫/の重み付き加算による連続体とフォルマント遷移周波数を変化させた/α/の連続体を組合せた刺激音を/sα/か/∫α/に同定させた．その結果成人の多くは英語母語話者成人と同様，フォルマント遷移よりも摩擦の中心周波数に重み付けをしたが，少数の成人と発達性構音障害児はの3-4歳の健常児と同様比較的フォルマント遷移に重み付けをした(Nittrouer ＆ Miller, 1997b)．従って成人の重み付けは一様でない可能性が推測された．発達性構音障害児は健常児と異なる語音知覚能力の発達経過を示す可能性が示唆され，その一因として音韻情報処理の問題が推測された．