第一原理シミュレータAdvance/PHASEの応用

摘要

本稿はナノ材料シミュレータ「PHASE」とその材料開発への適用例の紹介である．したがって，「製品開発とシミュレーション」という本欄の趣旨からはやや外れた内容となることをお断りしておきたい．材料分野においても，コンピュータの進歩とアルゴリズムの開発によってシミュレーションが果たす役割は増大しつつある．実際，CASTEP，VASP，Wien2Kなどの第一原理計算シミュレータを導入し，材料開発に役立てている企業は少なくない．ところで，これらはすべて外国産のシミュレータである．21世紀の産業において根幹的役割を担うと期待されるナノ材料シミュレーションが，すべて外国産によって占められるのは憂慮すべき事態である．このような危機意識のもとに，文部科学省は2002年，我が国の科学計算技術の育成と産業界での使用に供するシミュレータの開発を目指したプロジェクトを発足させた．PHASEはこのプロジェクトにおいて開発された第一原理計算シミュレータである．