差別化のポイントは「使いやすさ」の追求にあり－ユニバーサルデザインの考え方と適用の実際：自動販売機に関係するすべての人を対象に使い勝手と静かさを追求，既存の設計を全面的に見直す

摘要

クボタが2006年8月に販売を開始した初のユニバーサルデザイン（以下UD）仕様の自動販売機「KB250AP2BSUD-W」（写真1）は，同年度のグッドデザイン賞を受賞した。 受賞に至ったのは「『ユニバーサルデザイン』を実践している」，「使いやすさ·親切さがある」などと，デザイン性と使い勝手の両面が評価されたためである。同社が自動販売機においてUDを明確に意識するようになったのは，自動販売機の開発を担当する自動販売機技術部の基本方針に盛り込まれた2004年から。 KB250AP2BSUD-Wの開発を担当した自動販売機技術部の共田一寿チーム長は，UDに取り組み始めた背景を次のように振り返る。 「自動販売機を購入するのは飲料メーカーで，中の飲料を買うのはエンドユーザー（一般消費者）です。 われわれはこれまでにも，デザインでいろいろな試行錯誤を重ねてきましたが，ほとんどの場合，自動販売機のデザインは飲料メーカー主導で決まります。 しかし，誰もが扱いやすく，見ただけで直感的に使い方がわかるような良いデザインの自動販売機にすることができれば，エンドユーザーからの支持が得られます。 その結果，中味商品の売上アップにつながったり，飲料メーカーに選択されたりする可能性も高まります。 そこで，UDに価値を見出したのです」。 さらに共田チーム長は，飲料メーカーがUD仕様の自動販売機を採用することのもう1つのメリットとして，UD仕様機を設置することで「エンドユーザーを一番大切に考えている」という飲料メーカーの企業姿勢を明確なメッセージとして外部に発信できる点を挙げる。以上のような意味から，同社では自動販売機でもUDが開発の最重点事項の1つと位置づけられた。